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ポルノスター
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この町に栄えている重要な産業のひとつにポルノビジネスがある。 ゲイ、ストレート問わずアダルトビデオのプロダクションとスタジオが実に多いのだ。 あらゆる物を隠してしまうかのような濃い霧の町サンフランシスコには それを育む環境と人材があったと思う。 アンダーグラウンドが活気づきやすいここでは、 ときどき現実なのか理想なのか分からなくなることが起きる。
この町に住んで僕はたくさんのアダルトビデオを見ていることを実感する。 なぜなら町でポルノの俳優さんをかなりの頻度でみかけるからだ。 あんなエロいことをして見せてくれる人達。 それにしてもいきなり表で本人を目撃する瞬間は現実が一瞬遠のく。 まさかそれがここで起きるとは、
僕は間違いなくその男をゲイビデオで見ている。 その彼がティールームシアターになぜいる。長身だが服を着ているとまったく目立たない。 均整のとれた体格でストレートのジーンズに黒の革ジャンでキメてはいるが、 彼は明らかに場違いだった。 席の最後部の暗がりからスクリーンの奥、トイレにいたるまで彼は物色し徘徊を続けたが、 だれも彼に手を出す者はいなかった。 彼がゲイのポルノ男優と知ってか知らずか、 ハッテンしようとする客はひとりもいなかったのである。
自分が出演したビデオを上映しているかもしれないハッテン場映画館に 客として来ている彼はとても上品だった。 淫靡なヤリ部屋では整い過ぎた彼の姿を誰も崩せなかったし、彼本人もそれを貫いた。 どこかにほころびがあったら発展も進展もあっただろうに。 でももしポルノ俳優がハッテン場で乱れた姿を客に晒していたとしたら、 やはりそれはポルノスターとは言えますまい。 スターはどこに行っても孤独なものと聞いたことがある。
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